女優で元NHKアナウンサーだった野際陽子さんが肺腺癌で亡くなられた。
肺腺癌とは肺癌の一種で、タバコと結びつけられやすい癌だが、肺癌とは微妙に、そしてある意味衝撃的に異なる事実があるようだ。
野際陽子さんはステージも相当に厳しい段階だったらしく、すでにモルヒネも利用していたことが分かっている。
野際陽子さんは14年、肺腺癌が見つかり、再発もあってかステージが徐々に高くなってしまったようだ。手術や抗がん剤治療を受けていたことが長女・真瀬樹里さん(42)のコメントから分かっている。
ただ、肺癌となるとどうしてもタバコ、喫煙という連想があるけれど、肺癌の一種でありながら、肺腺癌はかなり別の特徴が多い。
ステージが低くても油断できないのだ。
そして確かに私たちの様な喫煙しない、しかも女性に対しても非常にリスクの大きな癌の一種のようだ。
タバコを吸わない女性でもかかりやすい肺腺癌!その他低いステージにも危険な特徴が
野際陽子さんはかなりのヘビースモーカーとも言われていたようで、肺腺癌が見つかったときにはステージが初期の段階だったのだろうし、禁煙したにちがいないけれど、15年にも再発している。
ステージも徐々に深刻になっていったようだ。
難しいのは、元ヘビースモーカー(?)の野際陽子さんは別かも知れないが、肺腺癌を含む肺癌の原因は男性の7割、女性では2割がタバコとなっている。
だから女性の肺癌罹患率は、タバコをたしなむからと言っても男性よりも圧倒的に少ないということだ(もちろんそれでも2割というのは高いが)。
今や癌による日本人の死因は第一位となっていて、その中でも肺癌は癌の部位別でトップとなってしまっているけれど、女性に限定して考えた場合、必ずしもタバコばかりが原因とは言えないようだ。
だから野際陽子さんの肺腺癌が、タバコが原因だったかどうかはおそらく医療の専門家にとっても結論が出ないのではないだろうか?
これがまず一つ目の疑問になるし、また同時に女性の肺癌、とりわけ肺腺癌は何が原因になりやすいのか、ということも気になる。
なお、癌でステージも末期になれば抗がん剤や手術も出来なくなり、結局モルヒネなどの痛み止めに頼るしかない。
野際さんの直接の死因は肺炎だと言われているが、そういう病気を呼び込むようにして体を衰弱させていったのは、やはり末期ステージに至った肺腺癌だろうし、証拠としてモルヒネの投与がある。
肺腺癌とは?
野際陽子さんのかかった肺腺癌というのは、肺癌の6割を占めると言われ、機関誌の末端や肺の末梢部に出来る癌のこと。
しかも女性の方が男性よりも発症率が高いという、変わった肺癌だ。
そしてステージの低い段階の癌によくあることだけれど、初期症状はほとんどない。
野際陽子さんも恐らくは自覚症状があったというよりは、定期検診などによって病気が発見された可能性が高いだろう。
そして病気の原因も、確かにタバコもあるけれど他の肺癌よりも別な原因が多くなる。
PM2.5などの大気汚染物質やアスベスト(いわゆる“石綿”)、さらには女性ホルモンとの関係まで指摘されている。
肺癌は、タバコを吸う人だと男性なら4倍から5倍、女性でも3倍くらいに罹患率が高まると言われているけれど、肺腺癌では男女智子の数値が半減する。
逆に言えば、比較になるけれどタバコを吸わない人でも肺腺癌の発症率は低くはない、ということなのだ。
そして一番怖いのは、ステージが低くても油断できない癌だと言うこと。
その理由は初期症状の少ないことと並んで、癌の進行速度が非常に速く、しかも転移しやすいためによる。
そしてもう一つ。
肺癌の罹患率は普通60代といわれている。
だから私たちの年代ならまだ安心、ということは決して言えないのだ。
その理由は、原因になるタバコが影響して肺癌になるのにふつう30~40年の年月がかかると言われている。
ということは、今の年齢でタバコのたしなみがある人は、ゆくゆく肺癌にかかる確率が必ず上がるということだ。
結局先のリスクを今拾って集めているようなものになる。
(参考:http://www.haigan-info.com/menu1_8.html)
性格的に見て野際陽子さんは癌にかかりやすかった?
私もよくテレビで語られる癌にかかった有名人や、あるいは身近にいる人たちで、そういう病気にかかる人たちを観察しようとすることがあるけれど、野際陽子さんの場合、肺癌や肺腺癌という種類の区分けはさておいて、確かに性格的に癌にかかりやすいのでは、みたいな印象は持ってしまう。
偏見だと言われればそれまでだが、肺腺癌という癌の種類はともかく、野際陽子さんは相当に性格がきつく、自分にムリをかけてまで仕事や義務をきっちりとこなそうとする人だったのではないだろうか?
それでいてそういう気苦労、肉体的な苦労を自分の中にしまい込んでしまうタイプの女性。そんな感じがする。
一般的に、癌にかかりやすい人の性格というのがよく言われていて、列挙すれば
・マジメ一筋の頑張りタイプ
・メンタル、肉体で自分にムリをかけ、しかもそれを表に表そうとしない
・性格がきつめ
となる。
もう一つは、普段それほど細々した病気、たとえば風邪とか似あまりかかったことのないような人だったのかも知れない。
風邪や下痢は、自分の健康管理のまずさを表すという一面があったりするので、上の様な性格の人はとりわけ忌み嫌うようなところがあるけれど、確かにこういう軽い病気にかかりやすい人というのはいるものだ。
でも不思議なことに、こういう風邪とか下痢をしやすい人に限ってあまり大病をすることは効いたことがないのではないだろうか。
私など、実のところ毎年のように風邪を引く女だが、風邪や下痢というのは体の中の毒素を体外に排出する、というデトックス効果があることが知られている。
だから私のように風邪を引きやすい場合、ちょうど良い具合に体内の老廃物や毒素が適度にそういう軽い病気によって排出されてしまうようだ。
ところが癌にかかるような人は、なまじそういう風にしてからだが頑健なため、知らないうちにムリをしてしまうのと同時に、体の中の毒素が体外に排出されない、という悪い面もあるようだ。
野際陽子さんのように、元々インテリで仕事バリバリの女性のような場合、とりわけ頑健な体の人が多い。
細かな情報がないので推測でしかないけれど、あるいは野際さんもそういう女性だったのでは、と思う。
末期ステージであってもモルヒネを投与しながら撮影に
ただ、それでも野際陽子さんの死去に至るまでの現実を知ると、本当に凄絶な最後だったこと。
そして最後まで仕事に対して熱心で、同時に自分の責任に対しても大変誠実で細やかな人だったことが分かる。
81歳と、今の女性の平均寿命に及ばず他界されてしまったけれど、最後まで女優として活動を続け、臨終の時には長女・真瀬樹里さんの腕の中で亡くなっている。
そのような野際陽子さん、驚くことに最近のテレ朝ドラマ「やすらぎの里」(平日12時30分~)に出演していた際などにはモルヒネを投与して痛みを消して撮影していたという。
モルヒネ投与だから末期ステージなことはほぼ間違いないだろうし、体も大変に辛いことだったにちがいない。
本当にすごいというしかない。
そして、肺癌、とりわけ肺腺癌という病気に対する認知度を高めてくれたのも野際さんを通じて多くの方たちが知った功績になるだろう。
享年81歳。心からご冥福をお祈りしたい。
羽根木彬